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リレーエッセーその15 山下 宏 |
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将棋を指すのは面白い。しかし自分が作ったプログラムが将棋を指すのを見るのはもっと面白い。将棋プログラムYSS(市販名はAI将棋)を作り始めてもう10年以上になるが、いまだにコンピュータ将棋選手権での自分のプログラムが正着を指すか、大ポカを指すか、というスリルと興奮は作った人にしか味わえない、格別のものがあると思う。 私が本格的に作り始めたのは1990年の浪人時代で、予備校の授業中にBASICを紙にせっせと書いては、土日に友人宅のPC-8801mkII-SRに打ち込んで走らせる、ということを繰り返していた。当時強かったのはなんと言っても森田将棋である。5手詰をも正確に読みきる強さと速さの前にとうとう一番弱いレベル1にすら勝てなかった。唯一勝てたのはPC-6001mk2で走るキャーリーラボの「飛車」というソフトで、市販ソフトにBASICで勝てたのはさすがにうれしく、今でも棋譜を残してある。 大学に入りプログラムを作る同志がいないかとさっそく将棋部に入部。しかし入るサークルを間違えたようで、逆に将棋にどっぷりつかる日々を送ることになってしまった。最初のBASICのプログラムは1手を読むことすらできなかったが(盤面を動かさないで指し手を決定する代物だった)、第2回のコンピュータ将棋選手権に参加したプログラムはPC-6601のアセンブラで動き、毎秒100手を読むことが出来た。ただ思考ルーチンは単純でαβ法さえ使っておらず、「こう指す、するとああ指されて困る、だから別の手を」といった形の3手読みしかできなかった(当時の私の将棋の考えそのもの、という話もあるが……)。それでも、これで優勝してやる!と、新幹線に既に旧式だった8bitマシンを積んで上京したものの結果はやはり惨敗。そもそも8年前と同じ性能のパソコンで大会に参加したのは今思えば無謀であった(余談だが現在のYSSは毎秒10万手を読む)。この時、同じく初参加だった極(現在の金沢将棋)がえらく強いソフトで、惜しくも森田将棋に敗れ優勝こそ逃したものの、翌年以降破竹の4連覇を達成することになる。
先手の金沢将棋の猛攻で後手のYSSの王様は風前の灯火だが、ここでYSSは13手詰を宣言、△7九銀以下即詰に討ち取った。1九にいる駒が香車でなく桂馬なのが激戦を感じさせ、今でも印象に残る局面である。なお、うれしさのあまりAI将棋2のパッケージの裏のサンプル画面にこの局面をこっそり使ったのは、内緒である。 【ご案内】 今年は5月の3、4、5日に、千葉の木更津にて第12回世界コンピュータ将棋選手権が開催されますので興味がある方はぜひ見学に来ていただければ、と思います。5日の決勝はプロ棋士の方などの解説付きで、見学自由です。詳しくはコンピュータ将棋協会のホームページhttp://www.computer-shogi.org/をご覧下さい。
(次回は広瀬正幸さんにバトンタッチ)
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