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リレーエッセーその55 松原 大 |
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たとえば合コンの席だ。初対面の異性が並んでいる。好みのタイプが正面にいたとしよう。普通は共通の趣味の話題あたりで盛り上がるわけだ。その人に「趣味は何ですか?」と尋ねられたら、こう言えるだろうか。うっかり、「大学時代は将棋部で、毎日棋譜並べと詰将棋を欠かさずやってたんだ。学生名人戦の代表にもなったよ。憧れの人は氷室将介かなぁ」なんて応じたら、おそらく自玉は即詰みだろう。 「将棋はダサイ」 悲しいかな、これが現状というものだ。スポーツと将棋を単純に比較するのはもちろん無理がある。見た目の華やかさやルールに詳しくなくても楽しめる点については、スポーツにかなわない。この差は仕方ない。でも、将棋ファンとしては何としても将棋=「暗い」「ダサイ」という構図からは脱却したい。だいたい将棋好きの若者は妖怪人間じゃないんだから、本来は「将棋が趣味です」ということを伏せ通し、闇に隠れて生きなくてもよいはずだ。 いつだって若者は異性にはモテたいもの。そういう本能(あるいは衝動)がなくなれば、人類はおしまいだろう。趣味は人それぞれで、ひとつに打ち込まなければそうそう上達はしない。それがサッカーでも将棋でも、どちらも立派なはず。でも、イメージってのは恐ろしく、注がれる異性の目も厳しい。たまに例外はあるにしても、(極論になるけど)将棋やってれば暗いと思われ、サッカーやってればカッコイイと思われる。とんでもない分水嶺だ。これじゃあ、あんまりではないか。 「将棋やってるからダサイ」 大学時代、周囲からそれだけは絶対に言われたくなかった。若者にとっては切実な問題だ。そのせいもあって(もともと服や靴が好きなのだが)外見には気を遣うことが多かった。これはいまも変わらない。そして(手前みそで恥ずかしい限りだが)、行きつけの古着屋である日、実際にこう言われた。 「将棋やってるけど、イケてるね」 そのとき何がどうイケてたのかはわからない。まぁ、店員さんのお世辞なんだろう。その部分はどうでもよかった。何より前段の「将棋やってるけど」という箇所が鋭く胸に突き刺さった。 申し遅れたが、わたしはかなりの将棋好きだ。高校・大学とも将棋部だった。所有する書籍も100冊はゆうに超えている。だからささいなことでも、将棋をマイナスイメージで捉えられるのは辛い。それほど将棋が好きだから、これを聞いたときは本当に悔しかった。
わたしは将棋関係者の方々と長年接しているから、素晴らしい人格者がたくさんいらっしゃることは重々承知している。しかし、将棋とまったく無縁の人はなかなかそう見てはくれない。先日、関西の大学将棋団体戦の会場に足を運んで、ためしに外見のチェックをしてみた。将棋そのもののイメージは将棋関係者から受ける印象でもある。その結果、学生将棋界の若者のほとんどは残念ながらやっぱりダサかった。きっとピーコには踏んづけられるに違いない。5年ほど前よりはよくなってると感じたけれど(おそらく女性部員が増えた影響だと思われる)、同じキャンパス構内にいた一般の学生に比べて、身なりをよく見せようという努力がまるで足りない。 たしかにモテたいというモチベーションだけで動くオシャレしか能のないヤツには感心しない。でも、モテることを最初から放棄してるような外見もどうだろう。少なくとも後者は若者として健全とは言い難い。ブランドで身を固めてくれと言うつもりはまったくない。でも、その会場の学生を見てこれだけは思った。将棋関係者の方々にはオシャレでなくてもいいから、もっと清潔な格好をしていただきたい、と。(まるで生活指導の先生だな、こりゃ…(笑)。上から物を言うようでスミマセン…) まぁでも、そうすれば将棋のイメージも少しはよくなるんじゃないかなぁ、と真剣に考えてしまう。 軟派な話をたくさんしてきたけれど、なにも世間体を気にしてるわけじゃあない。言いたいことを強引にまとめれば、結局イメージはファンの数に影響するし、ファンの数は将棋界全体に影響を及ぼすというお話になる。お隣の囲碁界では「ヒカルの碁」でブームが起こっているし、競馬界は人気タレントをCMに起用してイメージアップに努めている。その結果として、ファン(とくに女性)が増えているのは事実だ。 こういったイメージという切り口で将棋を語ると、「勝手な印象だけでダサイと断じて将棋の魅力を感じとれないヤツなんて、見る目がない。ほっとけ」という主旨の反論も耳にする。でも、わたしは放っておけない。イメージが悪ければ変えようとすべきだろう。どんな人でも知らない店に行くとき、入り口が狭くて散らかっていては入る気がしないはずだ。将棋初心者やファンへの門戸は広く綺麗に開けておくことが大切だろう。そのためには、やはりイメージアップが欠かせないと思っている。 個人的な話になるが、まったくもって微力ながらも自分にできる範囲(たとえば将棋関連サイト上での発言や普段の服装など)で将棋のイメージ改善に努めているつもりだ。こう言うと心底バカバカしく聞こえるが、当の本人は大真面目だ。こうしたささやかな努力(?)の積み重ねが、いつの日か実を結ぶことを期待している。 さて、冒頭の質問に答えておこう。わたしの場合、「趣味は将棋です」とカミングアウトするのは、なるべくお互いに気心が知れてからにしている。将棋のイメージアップ以前に、モテないと意味がないので…(笑)。ただし、近頃は相手の反応を見るのが楽しいので先に言ってしまうこともまれにはある。でも、その際は少し勇気が必要だ。 「将棋やってる人って、イケてるね」 将来はこう言われるようになることを願ってやまない。でも、さすがにそうなるまでには「合コン」なんてとっくに卒業してるだろうなぁ。(たぶん、ね) 次はダイちゃんつながりで10年来の友人、須藤大輔君にお願いします。詰将棋パラダイスのホームページを管理するかたわら、毎日詰将棋を作り続ける男(スゴイ!)としてその筋では有名人です。 (次回は須藤大輔さんにバトンタッチ) |