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詰将棋パラダイス短期大学の担当に就任して、早いもので5年になります。担当の仕事は今や私のライフワークであり、これを念頭に置いて生活が回っていると言っても過言ではありません。しかし、おそらく大多数の将棋ファンですら、詰パラの担当というのはどんなものなのか、さっぱりご存じないものと思います。このたびのリレーエッセイでは、そんな、担当のお仕事というものについて書いてみます。
曜日によってずれはありますが、毎月7日〜10日ごろ、いわゆる「解答の束」が到着します。これは前の月の出題に対する解答がコーナーごとに仕分けされて送られてくるものです。毎月原稿に追われて大変ではありますが、この解答の束を見る瞬間がいちばん楽しみ、というのが担当の性であります。とりあえず開封し、解答に一通り目を通します。
それからおもむろに採点に取りかかります。間違えるようなポイントのある作品はしっかりと見ますが、それ以外に関してはざっと見て手数が合っていれば○にしてしまいます。また、解答番付戦で上位を争うような強豪に関しては、案外逆にきっちり見たりします。勝負が懸かってるので、きっちり見るのがこちらの務めかなぁ、と思うのであります。
続いては集計。解答者のABC評価をまとめ、平均点を算出します。普通は表計算ソフトでも使うところなのでしょうが、どうにも表計算が苦手で、いまだに手計算で出しているのは内緒です。そのせいでよく合計が合わなくなるのはもっと内緒です。
またこれと並行して、解答の束に同封されてくる投稿作の検討に入ります。とはいえ最近は柿木将棋という便利なツールがあり、図面だけ全て入力してしまえば、後は仕事に行っている間に検討が終わってしまうなんて、これまた内緒ですね。不完全作にはその旨付箋を付けて返送し、採用基準に達していない作品についても理由を付けて返送します。私はだいたい第一印象で採否を決めてしまうのですが、返送理由はいろいろと気を遣ったりして、時間がかかるものです。また私はあまり(というか現担当者の中でいちばん)作品をため込まない主義で、びしびしと返送することで有名なようですが、これはこれで作品のサイクルが早くなって良いのではないかと思っております。採否に関してはどうしても私の好みが入ってしまいますが、こればかりはどうしようもありません。初形がきれいできっちりまとまっている作品というのが比較的採用率が良いようです。
この次は公式な作業というか、義務ではないのですが、私はまず解答者の短評を全てまとめて打ち込みます。これをしておくと作品ごとの短評が一目で見られ、選ぶ際に役に立ちます。また短評集はその後作者の方へメールか郵送でお届けしております。作者の方々にとっては、やはり生の解答者の声が全て聞けるというのは嬉しいことのようで、ご好評をいただいているようです。年輩の方々などからは、たまにお礼状をいただいたりもします。昨年臨時短期大学で谷川浩司王位の作品を特集し、全短評をお届けした際には、直筆のご丁寧な礼状に加え、記念の品まで頂いてしまいました。谷川先生はいい人だなぁと思うと同時に、すごい役得を感じました。
ここからが解説の執筆です。まずは手順と変化・紛れを書かないといけませんが、これが私の苦手なところです。手順はいいのですが、どの変化・紛れを載せるか、どの程度まで掘り下げるか、この取捨選択に大いに迷います。この作業が終われば解説執筆は8割方終了したと言っても過言ではありません。なにしろ後は自分で解説を書いて、短評を適当に挟み込むだけですから。解説には俗に桂花流(私のHN)などと呼ばれる「やっつけ解説マニュアル」があり、これを披露するのはあたかも私がいつもやっつけで解説を書いているとの誤解を与えかねないので避けたいところなのですが、伊奈めぐみさんの方から是非とも書いてくれとの要望がありましたので、後ほど書くことにします。いや、大したことではないんですよ、本当に。
これで一応結果稿は完成ですので、後は次の選題になります。前述のとおり在庫はほとんどなく、常時10作あるかないかのうちから5作を選ぶことになるので、そう迷いようがありません。5作バランスよくなるように気を遣ったりはしますが、いかんせん在庫が少ないので、ほとんど自転車操業になっているのもこれまた事実であります。また選題稿には担当者のことば欄があるので、これも書かなければなりません。17字×8行という僅かなスペースですが、これがなかなか悩むところです。作品について触れる必要があるときもありますし、それなりにウィットに富んだ気の利いたことを書きたいとも思います。そうして悩んでいるうちに、結果稿よりも時間がかかってしまうのも、いつものことであります。
ここまでが毎月の担当のお仕事であり、締切は毎月月末ということになっております。最近は仕事が忙しく、ほとんど月を越えてから原稿に取りかかるなんて、これまたばれたら一大事なのであります。
【付録】やっつけ解説マニュアル
本マニュアルは詰将棋解説を手早く書くためのものですが、良い子は真似をしないようにしましょう。
手早く解説を済ませるというと、短評を並べて終わり、というのが思い浮かびますが、それはもはや解説ではありません。ただの短評の羅列です。それはただの作業になってしまいますので、解説者の取るべき態度ではありません。ではどういう解説を書くのか、これから説明いたします。
まずは手順を書かなければなりません。これは投稿図を写せば終わりです。さらに変化・紛れも投稿図をそのまま書き写してしまいましょう。多すぎる場合はさすがにカットしなければなりませんが、少なすぎる分には読者に理解してもらえないのは作者の責任だと割り切って、そのままにしてしまいましょう。
ここから解説に入りますが、その前に一応作意手順に目を通しましょう。さすがにいくら何でも作品を見ずに解説するのは危険を伴います。作意手順にざっと目を通すと、なにがしかの印象を持つはずです。捨駒のキレがいいな、とか、収束の合駒非限定が気になるな、とか、打歩打開が巧妙だな、とか。もっと端的に持駒金4枚の趣向だな、でも構いません。何か感じましょう。何か感じれば、解説は出来たも同然です。まず、その感じたことをびしっと1行目に書いてしまいます。「捨駒のキレというもの」など、体言止めでびしっと言い切るのがコツです。そこからは勢いです。1行目で言い切った命題に対して、自分なりの考えを述べていきましょう。解説している作品とは一切関わりなく、一般論として述べていくのがポイントです。この考えはめちゃめちゃ一般的なもので十分で、それらしくそれらしく自信満々に言い切っていくことを心がけましょう。
これである程度の行数を稼いだら、いよいよ作品の解説に入るのですが、もうほとんど行数は残っていないという状況が理想です。「これを本作について見てみると、○○がきれいに実現されていて、見事と言うほかない。」くらいで予定行数が終わるのが理想です。後は適当に自分の論旨に沿うような短評を選んで、必要行数に達すれば終了です。
このやっつけ解説マニュアルを実践するには、自分なりの詰棋観というものが必要になります。つまり、一般的な命題に対して自分なりの考えを述べていくだけの詰棋に対する経験とでも言うべきものが必要です。こう書くと大変なようですが、こんなものは他人の解説を読んでそのままパクッたものを、日頃からストックとして貯めておけば楽勝です。
全然難しくないでしょ。これで貴方もやっつけ迷担当者です。
毎月こんなやっつけ解説をしていることが詰パラの水上仁社長にばれたら、それこそ一大事です。このエッセイが水上さんの目に触れないことを祈って、筆を置きたいと思います。乱文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
しばらく詰キストの間を回そうかとも考えたのですが、内輪ネタが続きそ
うなので、やめておきます。なるべくまともな指将棋の強い方に戻すべきであろうということで、暮れの全日本学生団体対抗戦(王座戦)で優勝された立命館大学のエース、加藤幸男さんにバトンを託します。旬の若手ですので、興味深い話を期待いたします。
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