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リレーエッセーその72 戻れない場所へ 上川香織 |
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昨日 夢を見た あれはいつの頃 大きな自由に包まれてた 小田和正さんの『昨日見た夢』という曲の出だし。私が見る夢は海や島が出てくる事が多い(注・夢分析厳禁〜)。多分、故郷瀬戸内海の風景が強く心の中にあるんだろうと思う。この曲を聞くと、そこで過ごした日々が自然と思い出され、なんとも甘酸っぱい心持ちになる。 私の実家には母家の他に二階建てのプレハブがある。父が知り合いから譲り受けて元犬小屋があった所に立てたもので、一応物置として使っていたが、ねだって二階は私の部屋にしてもらった。他の家族は母家で寝るのに私はわざわざ外に出てプレハブの二階に向かう。姉と同じ部屋から独立したこともあるが、自分の家を持った感じがしてこのプレハブの二階が私はとても好きだった。中学の頃の一夏か二夏か、一冬か二冬か、いろいろあって記憶が定かではないのだけれども、強烈な日差し、すごい隙間風、部屋から見える海、独特の匂い、あの頃起こった出来事の断片的な記憶などが鮮やかに心に焼きついている。 井上靖だったと思うけど、短編小説で、子供たちが夏の緑の木々に包まれた滝壷に飛び込む風景を自分の原風景と言ってるのがあったと思う(この辺りも記憶が定かでない〜)。私にも原風景があるとしたらこの部屋で過ごした思い出だろう。 ちょっと回想……。あの頃、母家の屋根を走りまわってた。いたずらをして柿の木に縛られた。コックリさんをみんなでやって大騒ぎをした。……細かく思い出すとしょっぱいなぁ。時間が経つと思い出って美化されるのね……(ん? ん!? こんなのを原風景と言ってよいのか?) とにかく、なんですだ。あの部屋を出て、周囲16キロの島も出て、私の世界も広まったけど、あの頃のように安心できて、大好きだと思える場所にはいないと思う。小さな舟に乗ってふらふら漂っている感じかなぁ〜。もうしばらくは私サイズの小さな帆で、ふらふら風任せに進みたいと思う。そうしたらいつか、居心地の良い場所に辿りつけるかもしれない。 (次回は東野徹男さんにバトンタッチ) |