リレーエッセーその84

復刊&マイベスト3

金子タカシ



 バトンをもらった秋山さんのエッセイでも紹介して頂いたが、昨年の末から今年にかけて、以前に書いた棋書が2冊相次いで復刊された。

 一冊は『寄せの手筋168』である。将棋倶楽部24の掲示板での呼びかけ(kita3ありがとうございます)から、復刊ドットコムに票が集まったことを受けて、オンデマンド印刷での復刊となった。ご投票頂いた皆様どうもありがとうございます。コメント欄では、過分のお褒めに預かり、本人はかなり気を良くしております。
 『寄せの手筋168』は、初版が1988年、以後10年以上の間に10回以上版を重ね、絶版となったのが3〜4年前のことである。この本のきっかけとなると、もうかなり昔の話になるが、1986年に将棋ジャーナル誌に付録がつくことになり、それを私が担当したことまで遡る。将棋ジャーナル編集部の横田稔さんとの打合せにより、付録は1ページに2問を配し64問からなるスタイルの手筋集とすることに決め、「ザ・美濃崩し(T・U)」、「ザ・寄せ(T〜W)」、「ザ・凌ぎ(T・U)」など10冊を作った。当時大学院生だった私はこの付録の制作にかなりの時間を費やし、その甲斐もあって、付録は概ね好評を博することができた。その後、将棋ジャーナル誌の編集長を務めていた湯川博士さんのところに、高橋書店から将棋の本のシリーズを作る話があり、その中の一冊として私も付録の内容をまとめ、発展させた本を出す機会に恵まれたのである。こうして誕生したのが『寄せの手筋168』である。その後に出した『凌ぎの手筋186』『美濃崩し180』もいずれも将棋ジャーナル誌の付録が元ネタとなっている。

 もう一冊の復刊は、『ザ・必死』がMYCOM将棋文庫化されたことである。『寄せの手筋168』も必死中心の手筋集だったが、これは基本手筋を集めたもの。自ら必死問題を創作するようになったのは、ここ十年位の事で、この間に『ザ・必死』と『詰みより必死』という2冊の作品集を出すことができた。本にするには作品数が必要なので、既存手筋の焼き直し的な問題も多いのだが、両作品集から気に入っている作品を3作品ずつ紹介しよう。



 まずは『ザ・必死』から。



 本作の後半と同様の筋の作品が将棋世界の'99必至賞に選ばれていた。拙作の狙いはむしろ序盤の導入からの金と銀の動きの対比にある。





 定番の▲7一角の筋での桂の使い方がテーマ。比較的長手数だが、以前森内さんに見せたら数十秒で「▲○○○までですか」と即座に解かれた。まあ当然ですね。ということで1分以内に解けたら名人級。





 自然な実戦形から初手が狙いの一手。以後は追い手順となるが、最終手の感触がいいので、自分では悪くないと思っている。



 次に『詰みより必死』から。



 短手数の小品ながら、自分では気に入っている作品。





 駒が捌けて手順はまずまず、形も実戦形で悪くないのだが、2一桂と3三桂のダブりが唯一不満な点。





 初手に対する玉方の受け、さらにそれに対する限定打までの攻めは、いずれも新味のある手順と思う。形も自然な実戦形で、駒数も少なくまとめることができ、現在のところ私の代表作。



 では『寄せの手筋168』、『ザ・必死』に続き、『凌ぎの手筋186』、『美濃崩し180』、『詰みより必死』も復刊あるいは文庫化されることを願いつつ、大学将棋部の後輩の松田一彦君にバトンタッチ。



(次回は松田一彦さんにバトンタッチ)