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リレーエッセーその93 The sweet nails & groovy hair 船戸陽子 |
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最近ネイルサロンに行き始めた。と、言っても浜崎あゆみとかがしてるようなゴージャスネイルは明らかに主婦には邪魔だし棋士にも邪魔である。大体イキすぎちゃったネイルアートは「うっわーすごーい」とは思うけど自分の爪につくことを考えたらカワイイというよりもなんか面白くてそれはちょっと私の意図じゃない。キレイに爪を整えてもらってそれで好きな色を塗ってもらったりせいぜいキラキラするのを1コだけちょこん、と乗せてもらうだけ。ずっとピアノをやってたせいである年齢までそんなこともできなかったからちょっとうれしい。そして、いきなりネイルサロンに行きだしたのには理由がある。 爪の先と髪の先には魂が宿るという。 カリスマビューティージャーナリストが言ったんだったか高名な作家がどこかで書いてたんだか忘れちゃったけど、とにかく爪先と髪先には魂が宿るんだそうである。排水口にひっかかった女の髪の毛に恐怖を感じる人が多いのも、みんなどこかで髪先に魂が宿ることを知っているからかもしれない。髪はとりあえず自分でケアできるけど爪のケアはなかなかできないので、それでサロンに行きだしたというわけである。 行きだして思ったのは爪をきれいにしてもらうとほんとに優雅な気持ちになれるということだ。イライラしてるときも悲しいときもゆっくり爪を磨いてもらったり美しい色に塗ってもらったりするとそれだけでうれしくなる。なるべく指先に傷をつけないようにいろんな動作をするのでなにをするにも丁寧な物腰になる。逆にちょっとでもはげてしまうとえらい貧乏臭いというか悲しくなる。爪の先というこんなちっちゃい場所だけでこんなに気持ちが左右されるのかと思うと爪先に魂が宿るというのもあながち嘘ではないなあと思った次第である。 さて、ここまで読んで思った人も多数おられよう。「爪とか髪に気を使うヒマがあったら将棋のことを考えなさーい」。しごくまっとうな意見である。まっとうすぎて反論はできない。しかし考えてみてほしい。対局に負けたとき、「将棋も負けた。髪も爪もぼろぼろです」。これはみじめ以上の何者でもない。私は相当立ち直れない。逆に「将棋は負けちゃった。でも髪も爪もキレイ」。これなら、また、がんばろうって気になる。というかがんばれる。超売れっ子漫画家の安野モヨコさんも言っておられた。「3時間寝たけど爪はボロボロ」より「2時間しか寝てないけど爪はキレイ」のほうが絶対イイ、って。すごくよくわかる。 円形脱毛になっちゃったり、対局中かきむしっちゃったり、爪かんじゃったり、駒の漆で指がかぶれちゃったり、といつも髪や指先を痛めつけてるので、せめてそうじゃないときは気をつけてあげよう、と思う。 先月は対局が多くてサロンをお休みしてしまった。だけど月も季節も変わったからいま、これを書き終わったら早速行って来よう。対局は負けちゃったけど、大丈夫。私はまたがんばれる。ネイル担当のみーちゃん、ヘア担当のまこさん、いつもキレイにしてくれてどうもありがとう。私の爪と髪にはどんな魂が宿るのだろうか。 (次回は森充弘さんにバトンタッチ) |