リレーエッセーその103

明日への活力源

加藤勝起



将棋とは


 将棋って、何だろう。
 趣味で、趣味以上の存在。そんな漠然とした存在でしょうか。
 かつて社会に出た時に、こんな難しい命題と、いつの間にか向き合うことにな りました。  当時はとても忙しく、よくて月に1日しか将棋に時間を割けなかったのです。満足のいく将棋も指せなくなってきて、もう一生指すのは止めようか、と真剣に考えてしまい、そして実行をしていました。  そんな時でした。素晴らしい言葉と出会ったのは。

「…将棋というのは、勝負ではあるけれども、やはり娯楽であり、遊びのものです。とすれば、楽しみのあるものにしなければいけない」

 衝撃を受けました。名著『勝負』の中の升田幸三先生の言葉です。
 これは、創造の魅力という流れで語られた内容ですが、将棋はただの娯楽、と認識することから全てをはじめる、簡単で実に大切なことを教えていただきました。
 流石はヒゲの大先生です。



将棋と仕事

 更に難しそうなお題が現れました。しかも、今度は酔った頭で考えなくてはならないので難易度は大幅アップです。焼き鳥屋にて。

Aさん「カツオキさんは、何のために仕事をしているのですか?」
私  「難しい質問だなあ、何でだろう」
Aさん 「将棋を指すためでしょ、仕事は!!」(真剣)

 半分、説教というか、脅しみたいな内容です。
 こんな会話が、将棋を続けるための嬉しい栄養になったりします。

 Aさんは熱い発言をする人でした。西日暮里道場ではこういう熱い会話は普通に飛び交っていました。しかし、そんなAさんも仕事の影響で、研究会にいつしか顔を出さなくなり、大会でも全く見かけなくなりました。うーん、残念。
 仕事って、まず衣食住を確保するためのものだけれど、それ以上の労働は何のためだろう。
 将棋と仕事は、どういう位置関係なんだろうなあ。将棋が明日への活力源になれば、すべて解決するのに。
 ヒゲの大先生のご意見は。



かくれんぼ

 学生時代に将棋を頑張っていた憧れの先輩たち、夢を語っていた後輩たち、大勢いらっしゃったのですが、トンと最近会場では見かけません。
 社会に出てから、照れ屋さんになったのでしょうか。かくれんぼをしている様です。鬼に見つかったら、マズイのでしょうね、きっと。そういえば、私も止めていた期間があったような気が・・・。
 推測ですが大学将棋部関係者全体で、社会人になって将棋を継続して続けている割合は、2割を切っているのではないでしょうか。
 棋力の維持向上には継続性が必要で、時間を思ったように割けなくなると、勢い、極端な選択をする人が多いのでしょう。それに、将棋って何気にストレスがたまりますもんね。仕事でストレスが蓄積している状態だったり、寝不足が続いて疲れて体力が戻らなくなってきた、などのお疲れの現象があると、たしかに勝負将棋はつらい。純粋な将棋への想いが新しいストレス源に転化すると、もっとつらい。

 でも、たまに指すと、楽しいものです。
 おーい、かくれていないで、はやく出てこなきゃ。日が暮れちゃうよ。



ゴルフと将棋

 最近ゴルフをはじめました。
 人に勧められたのが動機ですが、青空の下でプレーをする開放感は実に爽快で、心地良いものですね。何よりも日頃の仕事のストレスからの開放が実感できるのが、とても気に入りました。
 ゴルフは、遊技人口が1300万人もいて市場規模も1兆4000億円以上あるメジャーな娯楽だという理由がよく分りました。社会人の4大娯楽は、上位からパチンコ、ゴルフ、競馬、麻雀とですが、遊技人口は全て1000万人を超えています。
 ゴルフは年に数回しかやらないなあ、という方々が大多数を占めています。気が向いた時に参加できる、というのが4大娯楽に共通した特徴です。
 将棋は娯楽ですから、その地位向上のためには、

・仕事のストレスを解消できる
・気軽にいつでも参加できる
・明日への活力源になる

 この3つのキーワードが大切なのでしょう。  現状は、継続して指していない人にとっての将棋は、この正反対の存在になっている場合もありますね。
 何か妙案はないかなあ。



ファンの条件

 将棋ファンの条件は、何だろう。
 将棋が好きっていうだけでよいのかな。
 ファンの鑑というべき、高次の情熱を持ち続け百折不撓の練磨を重ねられるアマ強豪の方々は、とても尊敬をしていますが、マニアの呼称がよりぴったりでしょう。

 まず、良き将棋ファンでありたいのです。
 ファンなら、将棋にためにできる範囲でお金も使いたい。ゴルフにかかる費用ぐらいは、簡単に出せるはず、と思います。でも、将棋ってお金を使うようなイベントが少ないのも事実なのです。
 ああ、面白いイベントがもっと増えないかなあ。



格闘技と将棋

 格闘技のファンが増えてきました。
 若い女性など、新しいファン層も増えています。K-1、プライド、本当に面白いですねえ。もう、目が離せません。ミルコ、ボブ・サップなどスターも数多く出てきています。時代の寵児という感じです。
 もともと格闘技はマイナーな存在で、マニアが観戦するだけのものでした。角田師範もK-1以前は、生活が大変だったようです。戦略のもと、衣装を変えショーアップしたのが、新しい流れとお金を呼んだのです。
 将棋も頭脳の格闘技、ともいえます。
 この格闘技の手法は使えないでしょうかねえ。1局の将棋を3対3で戦うイルミネーションマッチとか。話題づくりとか。興行として、将棋界が学ぶべきところは大きい、と思っています。

 そんな観点からいくと、この間の連盟会長の決定経緯は、1ファンとして実に勿体無いなあ、と感じました。2人に絞られたら、当然、将棋で決着をつけてほしかった。東京、大阪でファンを集めてイベントを行って、3番勝負で決めるのです。
 試合までは、私が会長になったら将棋界をこうしたい、と政治家の選挙前みたいにファンとマスコミに大アピール。そして、勝負の日、勝った方が会長就任です。その結果が事前に会議室で決めた人事の結果と違ってしまっていたら、「終盤のこの桂馬に、先生の会長にかける意気込みと、これからの将棋界を背負ってたつ責任感を感じました。先生こそが私よりも会長に相応しい〜。どーですか皆さん!」
 とのマイクパフォーマンスで、会場割れんばかりの大拍手。イベントの大盛り上がり間違いなし。めでたし、めでたし。
 少し、格闘技の観すぎかなあ。



一流の漢(おとこ)

 気分転換に、高田馬場のBIGBOXに行った体育の日、ストレス解消のためサウナに入りました。そのうち、左隣に外国人が腰掛けてきました。
 後で騒ぎになっているので、周りの人に聞くと、なんと格闘技K-1のピーター・アーツさんその人だったのです。とてもびっくりしました。只者ではないとは思いましたが、意外と気がつかないものですね。
 やはり、その活躍する舞台にたってこそ、選手は本当の意味で光り輝くのだなあ、とあらためて感じました。将棋の先生方も、勝負の世界にあってこそより光り輝くのですから、美味な一流の棋譜を味わいたい私たちファンはその舞台を確固とするために、微力ながら支えていけたらと思います。(一流の選手は、全ての意味で一流でした。)



 次は本年度のアマ名人を獲得した、一流のアマチュア、大学の後輩、山田敦幹さんにお願いしたい、と思います。



(次回は山田敦幹さんにバトンタッチ)