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リレーエッセーその111 燃えカス人間の独り言 渡辺俊雄 |
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自分の文章を書くにあたって改めて過去のリレーエッセーを読み返してみると、20代(学生時代)でアマ強豪といわれた方々の多くが30代近くから仕事や家事、育児等に追われて将棋と向き合う時間が減って苦しんでいるといった傾向があるようだ(自分もそうだから余計目に付くのかもしれないが……)。私の場合も勝利を求めて執念があったのは20代なかばまでの話しであり、気がついたら燃えカス状態になっていることを強く感じる。今回は燃えカス人間とやる気あふれる強豪(前向き強豪と名づける)の違いについて考察し、今後強豪であるためにどうしたらよいか考えてみたい。 以前、このエッセーの金内辰明君(20代)の欄を読んでいてライバルとして、私の名前が書いてあった。お世辞が半分とはいえ大変光栄に思うと共に意外に感じた。あなたのライバルは?ともし私が言われたら「1に菊田裕司(30代)、2に渡辺健弥(30代)、3、4がなくて5に、うーん、金沢健一氏(前バトン者)あたりかな……」と心の中で答えるからだ。 なぜライバルなの?といわれても理屈ではないので、正確には説明できない。例えば私は子供のころカラスに体育帽を盗まれた苦い思い出があるので今でもカラスがきらいなのだがそれと一緒で、将棋を覚えて最も感じやすい思春期に目の前にいた強敵だったからということかと思う。 ちなみに昔、大山康晴名人の書いた本には、 「升田さんは私にとって唯一無二のライバルであった。…(中略)…中原さんたちの若い世代は、盤上の強敵ではあっても、もはや私には競い合う存在ではない」 というような感じのことが書かれてあった。 私からみると金内君とか清水上徹君(20代)とかいう方々からは強く影響を受けているが、あくまでも盤上の強敵という感じが強い。だが冷静に考えて菊田君とは平成11年の平成最強戦、健弥君とは平成3年のマグロ名人戦以来1度も対戦していないが、金内君とは昨年5回も対戦している(しかも負け越している)。 やはりこういう現在対戦しそうな強敵をライバルと感じるようでなくては、燃えカス人間から抜け出すことはできないかもしれない。 昨年のR選手権大会のベスト4を見て懐かしく感じた。10年前の関東の学生大会ではないかと錯覚をするようなメンバー(年齢順に遠藤正樹さん(優勝)、樋田栄正さん、私(2位)、山田敦幹さん。皆30代)であったからだ。私以外の3人は当然前向き強豪と思う。 この3人に共通しているのは恐ろしい体力派であるという点である。 加藤幸男氏は準決勝の遠藤−トンカン戦(259手、遠藤さんの勝ち)について、 「今や伝説となっている関東個人戦準決勝での310手の将棋。その棋譜を並べた時の感動と同じもの、いやそれ以上のものがそこにはあった」 と述べているが、同感だ。もし私だったらそこまでへとへとになるまで戦った後に決勝戦があったら全然勝てる気がしない。(まあ決勝の相手が弱かったせいもあるだろうが……。ついでに加藤氏は決勝も見たのに、なにも感じていないのかと思ってしまった。弱者のひがみといえばそれまでだが……) 樋田さんは銀行マンで残業一杯のはずなのに、出場可能な大会は山陰から東北まで視野に入っていてとても真似できない。 トンカンさんは昨年のインタビュー記事によると毎日風呂につかって詰め将棋を解くのが上達の秘訣とのことで、一度私も真似してみたが、のぼせてしまうのでとても詰め将棋を解くどころではない(仕方がないのでトイレに詰め将棋をおいて解くようにしたのだが、嫁さんに早く出ろとせかされる。平凡な人間でもできそうな方法はないのだろうか?)。 まとめるとこんなところか。 1.前向き強豪は過去の感傷にひたっているより当面あたりそうな強敵に対して闘志をもやしている。 2.前向き強豪は一般人には及びもつかないような将棋体力をもっている。 これを実行できれば前向き強豪になれるのだが私にはとても無理だ。以上をふまえて次善の策として燃えカス強豪を目指すには、 1.(燃えカス人間は過去に影響されやすいので)敗戦は早く忘れる。 2.(将棋体力が少ないのは仕方がないので)ダメそうな変化は考えない。 ということが大切ではないかと最近考えている。 幸い最近執念が足りないので、忘れることには自信がある。将棋体力の有無は普段の生活に大きく左右されるので、将棋を指す時にも上手に手を抜く事を考えた方が良いのだろう。 以上色々くだらないことを書いてきたが、勝手にライバルということにして大変迷惑しているだろう菊田君にバトンを渡したい。
(次回は菊田裕司さんにバトンタッチ)
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