リレーエッセーその142

芸術家

早川 俊



 こんにちは、早川俊といいます。しばしお付き合いお願い致します。

 突然ですが私は、将棋という趣味の他に、バイオリンを少々たしなみます。実は将棋を覚えたのが小学生の半ば、バイオリンを弾き始めたのが幼稚園生の頃だから芸歴はこちらの方が相当長い。まあ、元来の性格である飽きっぽい所が災いし、将棋もバイオリンもそれぞれ数年の周期で中断したりしているので、いわゆる“大した者”にはならなかったが、それでも趣味は趣味として相応に楽しんでいる。

 もう10年程前の大学生時代は、ややバイオリンにウエートが大きい生活を送っていた。一日の持ち時間が10あるとすると、バイオリン6、将棋3、勉強1ってな感じ。道理で大学を卒業するのに通常よりもやや時間がかかったわけだ。

 幼稚園生から中学生のいわゆる始めた頃は、ソロという事で独りで弾いていた訳だが、多少人様に聞かせられる程度の技量が身につくと、ホームコンサートなどで、多少のお披露目をする程度。それほどの楽しさや満足感は得られなかった。

 学生当時、バイオリンにはまったのはそれなりの理由があった。大学に入学した時点では、飯の役にも立たないバイオリンを続ける気はそれほどなかったのだが、どこの大学にもあるいわゆる新歓コンパできれいなお姉さんについていくと、そこは管弦楽団の集会場。いつのまにか、バイオリンパートに入部していたわけ。あのきれいなお姉さんがいなかったら……もっと将棋やっていたんだろうなぁ。

 それからは、バイオリンを弾く事そのものよりも、オーケストラというハーモニーにはまっていった。ご承知の通り、オーケストラは様々の音色を出す楽器がそれぞれの役割の中で音を出し、その音を複雑に絡める事によって一つの楽曲を完成させる。ブラームス、チャイコフスキー、ベートーベン、マーラー、シベリウス、ムソグルスキー、ストラビンスキー、ブルックナー、ラフマニノフ、ドボルザーク、ワーグナー等数え切れないほどの曲をやったが、その全てが良い思い出である。

 以前、あるバイオリン奏者がテレビでこんな事を言っていた。

“バイオリンを音符通りに正しく弾けるのはバイオリン奏者、それに自分の感情をこめて表現するのがソリストである。しかしもっとも感動を与えるのは、その音に魂を込める芸術家だ”と……。

 拡大解釈をすれば、僕が参加していたオーケストラは芸術家の集まりだったような気がする。決して上手いとはいえない弦楽器パート、本番直前のステリハでも音をはずし指揮者に怒鳴られていた木管や金管パート、音を走って混乱を引き起こす打楽器パート。しかし常に皆が眼の前の楽譜に真摯に取り組み、通常であれば技量から考えても不可能とも思える難曲にチャレンジし、聞き手に感動を与える。

 今現在はそれら当時仲間で編成する新潟大学管弦楽団OBメモリアルオーケストラに籍を置き相応にオーケストラを楽しんでいるが、魂を込めて弾くバイオリン……どこか将棋と合い通じるような“もの”があるような気がしてならない。

 駄文にお付き合いいただきありがとうございました。新潟にお越しの際は是非お声がけください。美味い酒、肴、それと下手くそなバイオリンにて精一杯おもてなしさせて頂きますよ!



(次回は大平理紗さんにバトンタッチ)