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リレーエッセーその151 「将棋界と野球界」みたいな話 M |
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大庭さんからバトンをいただいたMです。Mと言っても性癖ではなく、普通にイニシャルです。隠すほどの名前でもないのですが、名乗るほどの名前でもないので、とりあえずMのままで…。 大庭さんからの紹介にもあったように、主にスポーツ系のTV番組の演出をフリーの立場でやらせていただいています。大庭さんと一緒に将棋のトーク番組をやっていたのですが、実は将棋は全くの門外漢。駒の動かし方と基本ルールは知っていますが、指した将棋の回数は40数年の人生で50局程なのではないでしょうか?(それも、主に小学生の頃に…)そんな私が将棋のファンサイトに駄文を書かせていただくなんておこがましい気もしますが、まあ素人の与太話と思ってお付き合いください。 将棋と野球 現在は将棋の番組も終了し、主に野球番組が中心の生活なのですが、前からよく思っていたんですけど、将棋と野球って何となくイメージ似てると思いません? 私が子供だった頃ってお父さんたちの楽しみと言えばビール片手にラジオのナイター中継聞きながら縁台将棋…、だったような気がするんですよね。実際そんな姿をしょっちゅう見ていたわけではないんですが、きっと皆さんも何となくイメージは思い浮かぶのではないでしょうか。 サッカーでも囲碁でもなく、野球と将棋。まさにこの2つは、私が物心ついた当時の、庶民にとっての娯楽の王様だったと思うんです。子供たちも誰に教わるでもなく、キャッチボールができ、将棋のルールを覚えていた、そんな時代だったと思うんです。でも、将棋と野球、今でも娯楽の王様なのでしょうか? キャッチボールをする子供の姿はめっきり見かけなくなったし、うちの息子たちに聞いても将棋を指せる子供の数もなんだか少なくなっているような感じですよね。 ご承知の通り、野球界はここ数年人気の凋落が大きな問題となっています。球団経営の悪化、TV視聴率の低迷などなど、昨シーズンのごたごたが一段落した今も、球界再編も視野に入れた改革の必要性がささやかれています。ライバルのサッカー界がJリーグバブル崩壊の後何とか立ち直りを見せているのに比べ、栄光の時代が長かった野球界は、その分対応が後手になっているような印象を感じます。 さて、そんな野球に対して将棋の現状はどうなのでしょうか? 正直そんなに将棋ウォッチャーではないのではっきりしたことはわかりませんが、ライバル?の囲碁界の攻勢に押されているってことはないでしょうか? 私の息子は将棋も指せますが、ご多聞に漏れずアニメの影響で囲碁の方に進んでいます。上の子はもうやめちゃいましたが、下の子は性に合っていたらしく県の代表決定戦に出場する位まで成長しています。そんなこともあってここ4年くらい子供たちの囲碁の大会に顔を出しているのですが、アニメが終わった今も結構盛況ですよ。もちろん、一時ほどの盛り上がりはありませんが、いい意味で子供たちの間に囲碁が根付いたと言う感じは受けています。漫画とアニメと言う、子供たち向けのメディアをうまく利用して効果的な普及を行った日本棋院の、まさに作戦勝ちって言う感じだと思います。 もちろん将棋界も子供たちへの普及には力を入れているのでしょうが、社会現象的な取り上げ方もされた囲碁ブームに比べたら、物足りなさを感じているのは私だけなのでしょうか? ユースなどの下部組織の整備によって一貫した育成が行われているサッカー界に対して相変わらず旧態依然とした高校野球がベースとなっている野球界…。そして効果的なメディア戦略によって子供たちの競技人口を飛躍的に増加させた囲碁界と子供たちへの普及に今ひとつ形が見えてこない(私に見えていないだけかもしれませんが)将棋界…。 どちらもライバルの方が国際的な認知度が高いだけに、ともにお世話になっている将棋と野球の将来に一抹の不安を感じてならないのです。 …とまあ、大して調べたわけでもなくましてや具体的なデータがあるわけでもないのに、イメージだけで勝手な事を書いてしまいましたが、それだけに世間一般の“将棋と野球”に関する認識って、こんな感じじゃないかな、と思います。 将棋界と野球界 そんな風に、私が勝手に“似てる”と思い込んでいる将棋と野球ですが、将棋界と野球界をシステムで考えてみるとまるで違いますよね。野球界は、オーナー然りコミッショナー然り、その運営に関わる人たちは全てプレイヤーとしての経験のない、いわば企業人ばかり。もちろんそうした構造が野球をビッグビジネスに成長させた一因でもあるのでしょうが、選手たちにしてみれば、最後の最後には自分たちの立場より企業の論理が優先されてしまい、昨シーズンのようなごたごたが起きてしまいます。 一方の将棋界は私の認識している限りでは、その運営は現役の棋士の方たちで構成される理事会を主体に行われている団体。心の底から将棋を愛する人たちの総意によって運営がなされるわけですから、まさに理想のシステム…、と思っていたのですが、果してそうなのでしょうか? 棋士の立場をわかりすぎるが故にファンの気持ちから離れてしまうというような事もあるのではないでしょうか? そんな事を漠然と感じたのが、瀬川晶司氏のプロ編入試験の話題でした。結局無事編入試験が行われ現時点で1勝1敗となっていますが、TVのニュースでも取り上げられたこの話題は、将棋界から疎遠になっていた私にとっても、久しぶりに触れた将棋界の話題と言うことで、その行く末には大きな注目を寄せていました。将棋界では編入試験を受けさすか否かで随分議論が交わされたようですが、このニュースを最初に聞いた時、私は「これを門前払いするようじゃ、ちょっと問題かな…」と思っていました。これまでの伝統、築き上げてきたシステム、三段リーグをやっとの思いで勝ち抜いた人勝ち抜けなかった人、様々な思いやしがらみがあるのかも知れませんが、ファンの立場からしたら単純に「アマでもプロより強い人がいるのかどうか、見てみたい」って言う気持ちが一番なんじゃないかと思うんです。ま、これを読んでいる皆さんにとっては議論し尽くした事だとは思いますが…。 まあテレビマン的な下世話な言い方をすれば、将棋の普及の為にもファンの為にも今回のような美味しい話をみすみす逃すなんてありえないわけで、議論されるべき事はプロ編入試験をどのようなイベントにしどのようなハードルを設けるかと言うドライでビジネスライクな問題であって、もし編入試験の是非が大きな問題として議論されたのであれば、その体制には問題があると言わざるを得ないのではないでしょうか。 ビジネスを追及するあまり、野球界がファン心理から離れていったのと同様、棋士の立場に立ちすぎるあまり、ファンの気持ちから離れていく場合もあるような、そんな気がします。 今回の事は将棋界にとって大きなチャンス! 願わくば、瀬川氏が見事編入試験を突破し、その後の後進に新たなプロ入りの道を創ってくれる事を願ってやみません。 将棋はスポーツだ!! 話はがらりと変わって、よく「将棋は頭脳スポーツだ」と言いますが、私もその考えには同感です。今年の「将棋界の一番長い日」、偶然家で見ていました。もちろん、対局の内容や深さなんて私にわかるはずもなく、単に番組でお世話になった先生方の表情を拝見したかっただけなんですが、佐藤先生と藤井先生の対局には思わず興奮しました。 秒読みの中で名人戦挑戦のプレーオフ進出をかけて攻める藤井先生。そしてそれをしのいでしのいで、最後に勝利を収めた佐藤先生。もし、頭脳に体力のような尺度があるなら、お互いそれを出し尽くしたようなすさまじい戦いは、まさにスポーツそのものでした。 この対局を見て改めて感じたのは、将棋の一番の魅力はお互い死力を尽くして戦い、最後に勝者と敗者に分かれるという、格闘技にも似た残酷なスポーツ性なのではないかということです。 文化的な側面やこれまでの歴史の中で培ってきた伝統が大切なこともわかりますが、このスポーツ的な魅力をどのようにアピールしていくかが将棋界の発展につながるのではないかなどと、勝手に考えています。 その為にも、将棋界全体がもっと未来志向になっていくように期待しています。 …と好き勝手なことをうだうだと書かせていただきました。まあ、所詮将棋を指さない(指せない?)男の戯言ということで、さらっと読み流してください。その代わり、お口直しというかお目直しというか、私のバトンは谷川治恵前女流棋士会会長にお渡しします。トーク番組のゲストにお越しいただいた際には、楽しく印象的なお話をたくさん聞かせていただき、大変お世話になりました。今回も、またまたお世話になりますが、よろしくお願いします。
(次回は谷川治恵さんにバトンタッチ)
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