リレーエッセーその154

ファミコン将棋は我が人生

金綱久夫



 多田佳子女流四段からバトンタッチを受けた金綱久夫です。社会保険労務士をしています。4月29日に東京大井町のきゅりあんで開かれた第15回女流棋士との親睦将棋会に出席し、抽選で多田さんの書かれた「人生は芝居」という色紙が当たりました。この色紙を毎日見ていると、昨年98歳で亡くなった新国劇の島田正吾氏の「白寿の芝居を惜しむ会」でのことを思い出します。この会は1月17日に丸の内の東京會舘で開かれ、多くの役者や女優と共に、沢山のファンが出席しました。中原誠将棋連盟会長も出席していました。
 「人生は芝居」という色紙を見ると、改めてそう思いました。

 私は、休日はいつも「ファミコン将棋」をしています。人間が相手だと、負けたとき悔しいからです。パソコン将棋は強いのでやりません。

 以前、故原田泰夫九段に、どうしたら将棋が強くなりますかと聞いたところ「自分より強い人と指すことです」と言われました。どうしたら将棋に勝てますかと聞くと「自分より弱い人と指すことです」と言われました。プロの棋士はアマチュアと指しても、少しも強くならないのだと思いました。私は強くなるより勝ちたいので、ファミコン将棋を指している訳です。

 ファミコンソフトの中で、高名な棋士が実名で出てくるソフトがあり「谷川浩司」と後手で指して、相手に「ありません」と言わせるのが何ともたまらなく嬉しいです。

 また「ファミコン将棋名人」の称号が獲得できるソフトも大変楽しいです。このソフトで「ファミコン将棋名人」になったので、「ファミコン将棋名人」という名刺を作り、ある就位式で会った谷川浩司先生にこの名刺を渡したところ「あのソフトは弱いから」と言われました。私は谷川先生がそのソフトに関係しながらそれはない、思いました。「あなたは大変素晴らしい! 今度一局お手合わせを願えますか」と言ってほしかったところです。

 私はファミコン将棋で相手が考えている時は、本を読んでいます。人間と対局している時には考えられないことです。これが本を速く読む秘訣にもなっており、一石二鳥です。

 多田さんはこのリレーエッセーで、遽伯玉(きょはくぎょく)の「年五十にして四十九年の非を知る」という言葉を引用し、遽伯玉は50歳になったとき、これまでの49年の生き方がすべて過ちであることを知って生き方を変えたのだということを書かれていますが、私にとってファミコン将棋ほど面白いものはなく、これからも続けていくつもりです。
 「年70にして69年の是を知る」という心境です。

 将棋界の言葉に「ゼ」という言葉があるとのこと。相手に何枚駒を渡しても、詰まない形のことだそうですが、私もこれからファミコン将棋に励んで「ゼ」の人生を送りたいと思っています。



 次の走者は将棋連盟前理事の北島忠雄六段にお願いします。



(次回は北島忠雄さんにバトンタッチ)