リレーエッセーその155

プロ

北島忠雄



 きびきびと仕事をしている人を見るのが好きです。それはレストランの接客であったり、引越し屋さんであったり、業種は様々ですが、きめ細かい正確な仕事振りに触れると、とても幸せな気分になります。中でも私は家の修理などをする職人さんの仕事が好きです。自宅の古い壁紙を新しいものに変えたときなど、出来ばえが、とても綺麗で、まるで魔法を見ているようでした。

 その時、ふと考えたのですが、私の仕事はどうだろう。この職人さんのようにプロのレベルに達しているだろうか。棋士の場合、私が最低限プロとして認められるのは対局の準備、研究に怠りがないこと。体調不良や持ち時間の切迫といった不利な状態でも平均点以上の将棋が指せること。ファンに対してのサービス精神。この三点が基本になるのかなと思っています。

 以前、テレビの番組で歌手のビリー・ジョエルがインタビューに答えていました。質問はあなたが成功した理由はというものでしたが、「私はミュージシャンとして特別な存在ではない。普通に歌が歌えて普通に演奏が出来るに過ぎない。ただ芸能界というところは、当たり前に出来なければいけないことが出来ない人間があまりにも多い」という答えでした。

 ビリー・ジョエルは、もちろんすばらしい才能の持ち主だと思いますが、驕らず、基本を大切にする姿勢が彼を長期的な成功に導いたのでしょう。

 私自身はタイトル戦を争うレベルの棋士ではありませんが、少しずつでも上を目指して頑張って行きたいと思います。



(次回は鈴木良尚さんにバトンタッチ)