1.はしぶみ
このたび、リレーエッセイを書くことになりました松井豊仁です。ご存知でない方がほとんどだと思いますので簡単な自己紹介をしておきますと、以前このエッセイを担当された天野啓吾さんの後輩にあたり、平成16年度関西学生将棋連盟理事、平成17年度関西学生将棋連盟理事長、同年度大阪市立大学将棋部部長を務め、大学入学以来ずっと将棋部裏方街道をひた走っております。
4年間の大学生活、私は学問でもクラブ活動でもなく、理事に心血を注ぎました。ここでは、私の理事に対する思い(特に縮図に対して)を書いていこうと思います。
2.邂逅
縮図とは関西学生将棋連盟が年に1回発行している機関誌で、形に残らない理事の仕事の中で、数少ない形に残る仕事です。大会結果やオーダー表、棋譜が主な内容となっています。そもそも、私が理事をやろうと決心したきっかけはこの縮図にあります。
私が理事になろうと考えたのは、市大将棋部を最初に訪れた1回生の4月9日のことになります。この日は水曜日で授業は語学だけでした。2限が終わり、中学・高校と将棋部に属していたことから、将棋部をのぞいてみました。そこで発見したのが、平成13年度の縮図です。読んだことのある方なら納得していただけると思いますが、あの内容・質は大変素晴らしいものです。高校時代ずっと文化祭のパンフレット作りをしていたので、この手の作業が好きだったのです。この縮図を読んだときに、これを越えるものを作ってやろうというのが、理事になろうと考えた最初でした。
平成13年度の縮図を作成した理事の一人、小林隆司さんは市大の先輩です。私は1回生の間に小林先輩から理事に対する様々なお話を聞くことができました。そして11月頃、連盟の掲示板に理事募集の書き込みがあったので、理事に立候補することにしました。
3.縮図理事
関西学生将棋連盟について簡単に説明しておきます。関西学生将棋連盟は関西の大学将棋を統括するのが仕事で、連盟は5人の理事と1人の理事長から構成されています。理事の任期は2年間で、2回生理事3人と3回生理事3人で構成されており、毎年3人の理事が入れ換わります。
私が理事に就任した時の連盟の状態を説明します。ご存知の方もおられると思いますが、関西学生将棋連盟は一時期多くの理事が連盟を離れたことがあり、このため平成15年度は3回生理事1人と2回生理事3人の4人で運営を行っていました。そのため、連盟の仕事の一つである棋譜集編集や縮図編集が滞っていました。この作業は人手が必要ですから、無理もありません。
そのため、私の理事としての最初の仕事は縮図及び棋譜集の編集でした。当時は不完全だった連盟の結果ページとバラバラになった資料をもとにして、平成13・14年度の縮図データを参考にして編集が始まりました。このときは平成16年度の棋譜集の編集作業も平行して行わなければならず、十分な力を注げなかったため、その出来映えは決して満足行くものではありません。校正作業も満足に行っていませんし、内容も大変薄いものでした。しかし、ここで積んだ経験は決して無駄にはなりませんでした。
4.縮図理事長
縮図・棋譜集の編集に明け暮れている内に年度が変わり、私は理事長になりました。いよいよ縮図作りも本番です。就任当初から、私は漠然ながらある計画を抱いていました。それは、その年度の縮図をその年度のうちに作るというものです。例年、縮図はその年度の最後の大会である最強校戦(平成17年度に学生団体最強戦と名称が変わりました)の結果までを含めるために、完成するのが翌年度になっていました。それよりは、最強校戦や冬の全国大会の結果を次年度の縮図にまわしてでも、その年度の内に完成させてしまう方が良いと考えたのです。その理由は、最強校戦が終わってしまうと、理事が集まる機会を見つけることが困難になり、また年度の変わり目ということで忙しくなり、編集作業がはかどらないと思ったからです。
もう1つ考えたことは、棋譜集(春期・西日本・秋期)と縮図の4冊に分かれているのをまとめて1冊にすることです。この方法では春期の棋譜が年度末まで目にすることができないので、判断に迷ったのですが、この方が読む方としてはまとまっていてわかりやすいものになりますし、作る方としてもかなりコストを抑えることができます。
そんなことを漠然と考えている内に春期大会が終わり、西日本大会が始まりました。このとき鹿児島大学の方から西日本大会の棋譜集について問い合わせがありました。そのとき会計理事の津川力君(京都大学)が「王座戦までに(縮図)できるかな」と私に聞いてきました。そこで、それまで漠然としていた考えをまとめることにました。
王座戦が開催されるのは12月の第3週です。印刷にかかる時間を考えますと、遅くとも12月の頭には原稿が仕上がっていなければなりません。西日本大会が行われたのは8月末ですから、9〜11月の3ヶ月間で完成させなければならないことになります。このときは正直、王座戦までに間に合うかどうかは自信が持てませんでした。しかしやれるだけはやってみようと思ったのです。私は津川君に「よし、間に合わせてみよう」と答えました。
9月になり、早速編集作業の開始です。まずは大会結果からまとめていきました。これは今までの縮図と何ら変わりありません。いままでの理事が作製した原稿フォーマットをベースにして、結果を入力していきます。これは私が担当しました。棋譜の編集は、私と宮岡健二君(関西大学)と小林一三君(神戸大学)に担当してもらいました。これは各理事が「棋泉」を使用して入力した棋譜データを使い、棋譜と図面をコピー&ペーストしていく作業ですが、それぞれの棋譜がページにきちんとおさまるように図面の数を調整しながらの作業ですので、単純作業ではありません。縮図編集の中で、一番大変な作業だと思います。そしてオーダー表の入力。これは私が担当しました。これはオーダー表を見ながら入力するだけですが、学年が抜けていたりすると厄介ですね。関西地区ならば、連盟登録用紙を見れば学年がすぐにわかりますが、他地区だと結構大変ですね。各大学将棋部のページをあたったり、さまざまな情報網を頼って埋めていきました。
そして、自戦記などの原稿です。多くの人のにいろんな大会を知ってもらおうと、関西勢が出場した大会は、関西勢が優勝した大会でなくとも、できるだけ原稿を書いてもらいました。あとは、企画のページです。ここではいろんなことを試してみたかったのですが、時間の関係であまりできませんでした。しかし、平成13年度縮図に企画されていた将棋大賞選考会と座談会、データ統計はやりたかったので、この3つだけは盛りこみました。
後は細かいことですが、読みやすい紙面を作成することを心がけました。表記のゆれや、数字の半角全角、表のフォーマットなど気がつく範囲で統一感を持たせました。またページ数が多くなったので、まとまりごとに扉のページを設け、大会結果のページからでも、棋譜やオーダー表をすぐに見られるようにしたり、版下をレーザープリンタで出力して、少しでも質のよいものができるように配慮したつもりです。
月日はあっというまに過ぎていき、12月4日、秋期最後の大会が終了しました。翌日からの1週間は、理事生活でもっとも忙しい週間になりました。連盟企画のページを除いて、原稿はほぼ完成しているので、作業のほぼ全てが校正作業になります。このような冊子の編集作業をしたことのある方なら、おそらく納得して頂けると思うのですが、作業工程の中で一番大変なのは、校正作業だと思っています。校正作業は入力作業と違って、終わりがありません。このことが、校正作業というものを大変なものにしています。
校正作業とその反映作業が終了し、原稿を日本アマチュア将棋連盟に送ったのが12月13日で、王座戦の1週間前です。原稿を提出してからは気が気でなかったのですが、19日に「完成品を会場でお渡しします」とのメールが来たときは感無量でしたね。売れ行きもとても順調で、多くの方に購入していただきました。理事をやっていた中で一番嬉しいできごとでした。
各理事の奮闘はもちろんのこと、選手の皆様、及び日本アマチュア将棋連盟様の協力のおかげで、縮図は無事王座戦に間に合いました。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。
5.運営環境
これまで縮図について長々書いてきましたが、その他の運営全般にもここで触れておきます。
大会を行おうとした場合、会場の確保というのは極めて重要なことですが、幸いなことに、関西地区は同志社大学・甲南大学・大阪市立大学といった大学が、会場を無償で提供して下さっています。また、大人数を収容しなければならない西日本大会も、近くに宿泊施設もあって、安くレンタルできる会場があります。会場という点で、関西地区は大変恵まれた環境にありました。
また、学生将棋は1局に長い時間をかけることができるので、1日に行う局数が少なくて済みます。そして、ほとんどの選手が大学将棋部に所属しているので、部の方である程度大会がどのように行われているか話が通っており、選手と理事がお互いの勝手をかなり知っている状態にあります。このためトラブルが起きにくく、運営が円滑なものになります。
一般大会のバイトに参加して思ったのですが、学生大会は事前に組み合わせが決まっている分、当日に行う作業が少ないので、運営は一般大会に比べると、楽ではないでしょうか。
あとはホームページ管理ですが、最近はパソコンが普及し、携帯電話からでも掲示板への書き込みができるようになったので、ホームページの更新は、以前に比べると楽になったと思います。またWikiの登場により、パソコンについての詳しい知識がなくても、今まで以上に容易にホームページの管理ができるようになりました。最初は大変かもしれませんが、一度作ってしまえば、大会結果など使い回せるデータも多いので、人の名前を大量に入力しなければならないことを除けば、思ったよりしんどいものではありません。
6.さいごに
この原稿を書いているのは2006年8月ですが、西日本大会を覗きにいったところ、もう今年度の縮図の編集がだいぶ進んでいました。一生懸命やった縮図編集ですが、やり残したと思うことも多々あります。今年度の理事諸君には、昨年度の経験を生かして、それ以上のものを作ってもらいたいと思います。
大会の運営をしていると、いろいろな問題が見えてきますし、大会中に問題が起きることもあります。このことについての私の考えを記して結びとさせていただきます。これは縮図でも書いたのですが、問題の多くは選手の皆さんの協力があって解決します。大会運営が円滑に行われるかどうかは、選手の皆さんが自身も運営者の一員であるという意識をどれだけ持っているかにかかっているのではなかと思います。運営側としては、この意識をどれだけ喚起できるかが大切ではないでしょうか。
原稿が遅れた上に、拙い文章を長々と失礼しました。次は私の先輩にして、大学4年の時に学生タイトルである学生王将に輝き、見事有終の美を飾られた西川恭平さんにお願いします。
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